芸能人のSNS発信をきっかけに、日本でもヘアドネーションというボランティア活動が活発になってきています。
病気の治療などで頭髪が抜けてしまった子供達へ、慈善団体が医療用ウィッグを作って贈るために、伸ばした髪を寄付する活動です。
素晴らしい活動のはずが、なぜか「意味ない」といったネガティブな噂も耳にします。
人の役に立つヘアドネーションなのに意味がないというのは、いったいどのような事で「意味ない」と言われているのでしょうか。
ヘアドネーションに協力したい気持ちがわいても、意味ないなんて聞いたら少しためらってしまいますよね。
本当に意味ないのでしょうか?
ヘアドネーションの事を調べていくうちに、どうして「意味ない」と言われてしまうのかが見えてきましたので説明していきます。
ヘアドネーションで意味ないのは15㎝の髪
どうしてヘアドネーションが意味ないと言われてしまうのか。
意味ないのは、どのような事を指して「意味ない」となってしまうのか。
ヘアドネーションで作られる医療用ウィッグとはどのような物なのかを知ることで、その糸口が見えてきました。
医療用ウィッグとは、主に抗がん剤治療中や脱毛症、不慮の事故などで頭髪を失くした人に使用するものを言います。
一回の着用時間や着用期間が長くなるため、医療用ウィッグには通気性や着け心地の良さが求められると言えます。
そのような品質面も大切ですが、長く着けるものとして見た目も重要になってきます。
治療中に着けるとなると、メンタルを少しでも穏やかにするために、見た目の自然さも欠かせない要素になります。
人工毛の医療用ウィッグもありますが、つむじや髪の植え付け部分など、人毛を使ったウィッグの自然さにはかないません。
そうした細部にまで気を配って作られる医療用ウィッグが、ヘアドネーションで作られているウィッグなのです。
ひとつのウィッグを作るために、30~50人分の長い髪の毛が必要になります。
そして、ウィッグを希望する人の多くは、ロングタイプのウィッグを希望しているそうです。
ヘアドネーションで寄付できる髪の毛は、長さ31㎝から受け入れてもらえます。
ですが、扱うのが人の髪の毛という性質上、規定は設けていても切れ毛や傷んだ毛も混ざっているので、細かい選別作業は欠かせません。
以前、15㎝以上の髪でもヘアドネーションを受け入れていた団体がありました。
今ではその団体も、他の団体と同じ31㎝以上の受け入れになっています。
そうしたこともあったせいか、今でも15㎝以上なら寄付できると勘違いして送ってしまう人も多いらしいです。
善意で送ったはずの髪が使えないだけではなく、ただでさえ膨大な選別作業がさらに増える結果になってしまうのです。
「意味ない」というのは、ヘアドネーション全体の事ではなく、このような手違いから本当に必要な髪が集まらない現状の事だったのです。
ヘアドネーションの始まり
ヘアドネーションは、アメリカの団体Locks of Loveなどが行っていた活動が発祥です。
日本では、2009年にNPO法人Japan Hair Donation & Charity(通称ジャーダック)が活動を開始しました。
設立当初は、HPで髪の毛の寄付を募っても月にわずか数人しか送られてこなかったそうです。
地道な活動で寄付を増やしてきましたが、芸能人がSNSでヘアドネーションのことを発信したのを機にさらに広く知られるようになり現在に至ります。
寄付された髪で作られた医療用ウィッグは、病気や不慮の事故、抗がん剤治療などで頭髪を失った18歳以下の子供達に無償提供されます。
子供は既製品のウィッグではサイズが合わない場合が多いので、すべてフルオーダーで作られます。
一般にこの方法で人毛の医療用ウィッグを購入するとなると40万~80万程かかるため、かなりの高額になります。
ヘアドネーションの意味ない理由とは余っているから!?
ヘアドネーションへの関心が高まり、個人でも団体に髪の毛を送る人が増えたのは良いことですよね。
ですが、それでも送られた髪の毛で医療用ウィッグを作ろうとすると、使える髪の毛はまだまだ少ないそうです。
人の髪ですから、ウィッグに使えない傷んだ髪も混ざっていたりします。
ヘアドネーションできる髪は31㎝以上とありますが、需要の多いロングタイプのウィッグだと、もっと長い髪の毛でないと作れないのです。
- 31㎝ → ショートウィッグ
- 40㎝ → ボブウィッグ
- 50㎝ → ロングウィッグ
- 60㎝ → スーパーロングウィッグ
一番需要のあるロングウィッグを作る髪の毛は、慢性的に不足しているのです。
送られてくる髪の毛は、規定を満たしている31㎝以上40㎝未満のものが多いそうです。
需要が高いウィッグに使用できないのでは、意味ないことになってしまいますよね。
そのため、せっかくヘアドネーションで送った髪の毛が保管に回ってしまうため「余っている」状態になっているのです。
それに、慈善事業ですので圧倒的に作業するときの人も費用も足りないといった現実もあります。
送られてくる膨大な髪の毛の仕分け作業が追いつかない状態なのです。
そうした理由も重なり、送った髪の毛が余っているのだから意味ないのだと勘違いされてしまったようでした。
こちらも、ヘアドネーションが意味ないと誤解されてしまう一つの要因です。
慈善団体の話では、決して余っているのではなく、作業ができるまで大切に保管しているとのことでした。
コロナ渦も影響した団体の悩み
ただでさえ資金と人手が足りなくて作業が追いつかない状態ですが、コロナ渦でさらに活動が思うように進まないことも影響したようです。
毎日髪の毛は送られてくるのにまったく作業ができない時もあることから、保管場所にも困る事態にまでなっているようです。
このような内情は、あまり知られていないと思います。
こうした状況下ですので、受け入れ態勢は大丈夫なのかということも確認してから協力したいものですね。
ヘアドネーション本当に意味ないのは悪徳業者に奪われること
ヘアドネーションの認知度が上がったことで、思わぬ弊害も生まれました。
ヘアドネーションの団体や団体関係者を装って、善意である髪の毛をだまし取り、利益を得ようとする悪徳業者の出現です。
このような事をされたら、寄付者は「ヘアドネーションは意味ない」と思うのを通り越し、悲しくなってしまいますよね。
人毛の売買は違法ではないので、事業としている業者はたくさんあります。
ですが、問題なのはヘアドネーションという人の善意を利用して、だましているところです。
悪徳業者は、SNSで「ヘアドネーションをしたい」といった投稿を見かけると、コンタクトをとり自分の団体に送るように仕向けてくるそうです。
投稿主は自分の髪を意味ないものにしたくないですから、悪徳業者だとは知らずに送ってしまうのです。
本来届くはずのところに届かないことの方が、はるかに意味ないことになってしまいます。
慈善団体も、こうした被害で本当に必要な髪の毛を奪われるので、さらにウィッグの製作が遅れてしまうのです。
とある団体が、Facebookで悪徳業者がいることを発表して注意喚起しましたが、まだ被害は起こっているとのことです。
日本の信頼できるヘアドネーション団体
ここで、長くヘアドネーションの活動をしている信頼できる団体名をご紹介しておきます。
- NPO法人Japan Hair Donation & Charity(株式会社アデランス)
- NPO法人HERO(医療用プロジェクト)
- つな髪プロジェクト(株式会社グローウィング)
- 女子高生ヘアドネーション同好会(株式会社アートネイチャー)
カッコ内は各団体のウィッグ製作における協力企業・メーカーです。
不審な点があるときは、上記の団体に問い合わせてからヘアドネーションに協力することをおすすめします。
ヘアドネーションの具体的な手順
いざ、あなたがヘアドネーションをしようと考えた時の手順をご紹介します。
一番確実なのは、ヘアドネーションに賛同して協力している「賛同サロン」として登録している美容室でカットして、そのまま美容室経由で送る方法です。
ですが、まだそのような美容室が少なかったり、カットは行きつけの美容室でしてもらいたいということもあるでしょう。
その場合は、ドネーションカットの方法が詳細に書かれた資料があります。
各団体のHPに載っていますし、YouTubeに動画もあがっています。
印刷用のPDFファイルもありますので、そうしたものを美容師さんに必ず目を通してもらってからカットしてもらいましょう。
そうしたことにより、ウィッグを作るときの作業が効率良くなります。
その積み重ねが多くなることで、ひとつでも多くのウィッグが本当に待ち望む人のところに届けられます。
それから、任意ではありますが、送る髪の毛の状態を書き込めるドナーシートというものがあります。
髪の毛の状態は、人の数だけ違います。
このドナーシートを添えてもらうことによって、髪の仕分け作業やその後のトリートメント処理に大変役立つそうです。
ご自分で髪を送る場合ですが、各団体でその時の状況も変わります。
せっかくの善意を無駄にしないためにも、直前に送りたい団体へ問い合わせしてからにしましょう。
賛同サロンは近くにある?
ヘアドネーション団体の各HPで、賛同サロンが近所にあるかどうか検索できます。
私の場合はどうなのか気になったので、さっそく調べてみました。
私の住まいは、都会過ぎず田舎過ぎない、よくある郊外型の居住区です。
それぞれの団体の賛同サロンを検索して合計したところ、私の場合は残念ながら1桁超えませんでした。
50件弱美容室がある市ですので、賛同サロンは約2割といったところでしょうか。
地域によって差があるとは思いますが、もう少し増えてくれたら良いなと思います。
まとめ
- ヘアドネーション自体は素晴らしい慈善活動
- 「意味がない」というのは、送っても使えない髪のこと
- 善意を無駄にしないために、協力するときは団体に問い合わせてから
今回ヘアドネーションのことを調べてみた結果、いかにヘアドネーションという言葉がひとり歩きしているのか実感しました。
意味ないという噂ばかりが目立ち、具体的なヘアドネーションの方法まではあまり知られていないこともわかりました。
ヘアドネーションを意味ないものとしないためには、個人の関心も必要ですが、身近な場所で気軽に協力できる仕組みがもっと必要です。
賛同サロンの数が着実に増えていけば、悪徳業者の入る隙間もなくなるでしょう。
そのようなしっかりとした仕組みが徐々に確立されれば、意味ないといった噂もなくなるでしょう。
ネガティブな噂でせっかくの素晴らしい活動を意味ないものにしないためにも、まずは噂に流されないということが大切ですね。
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