作業療法士とは事故や病気で失った身体機能の回復をはかるために必要不可欠なお仕事です。
目的に応じた作業を患者さんと行い、精神的ケアを含めたリハビリテーションを進めていくことが作業療法士の大事な役割です。
養成課程を持つ専門学校や短大で3年以上学び、国家試験を習得する必要があります。
その狭い門を通らなければいけない職がやめとけと言われています。
需要も高く、やりがいのある作業療法士という仕事をやめとけという声が上がるのはなぜなのかを解説したいと思います。
年々資格取得者が増えているものの離職者も少なくはありません。
せっかく勉強するならば、やめとけと言われる3つの理由を知ってから進んでほしいと思います。
作業療法士をやめとけと言われる理由
作業療法士の働き口は、病院、リハビリテーションセンター、老人ホーム、福祉施設などがあります。
職場によって忙しさはまちまちですが多くの現場で多忙な日々を過ごしている作業療法士の方が大半です。
では、そのやめとけと言われる具体的な所以は何なのでしょうか。
仕事がきつい
まずやめとけと言われてすぐ浮かぶのは仕事の大変さです。
受け持っている患者数が多すぎることが原因で残業が日常化しがちです。
担当している患者数が多ければ、その分、プランを作成したり、記録をつけたりする事務仕事の時間が増えます。
勤務時間内に患者さんとのリハビリが終わったとしても、その後の事務仕事で時間外や休憩時間を削ることを余儀なくするのです。
また土日などの休みは勉強会や研修で潰れることが多く、心身の回復する間がありません。
作業療法士は、定期的に勉強会や研修会への参加があります。
会議や勉強会、講習などはどのお仕事でもまったくないところはないと思いますが、作業療法士の研修はかなり多めです。
その講習に向けて資料作成やレポートの提出で、時間外労働、自宅に持ち帰るなどプライベートな時間が少ないです。
職場の拘束時間が長いことで、入社時に抱いていた向上心とやる気が削がれていき、やめたい気持ちが高まってしまう現実があります。
作業療法士が行うリハビリは、患者さんの日常生活を少しずつ正常に戻していくために時間がかかります。
根気強さとよりいいリハビリをしていくための向上心が必要になっていきます。
人間関係がつらい
社会復帰を目指す患者さんの心身のサポートをするということは、頼られて知らず知らずにプレッシャーを感じてしまいます。
日常的なプレッシャーは期待として受け取れるうちはいいですが、蓄積されるとそれはストレスに変わります。
人の役に立ちたいとこの道を選んだ人にとっては、精神的にしんどくなってしまいます。
患者さんやそのご家族に密接に関わることで人間関係というトラブルにも陥りやすいでしょう。
そのトラブルを相談したい先輩や同僚も仕事をする上で価値観や違う考え方を持っていて上手く発散できないということがあります。
高い意識を持っているがために自分が正しいと思っている人もいれば、意識が低く適切な指導もなくノルマをこなすだけの人もいます。
大抵、受け持ちの担当は患者さん数人にあたり一人なので同じ悩みを共有することも難しいです。
残業が多いのでお互いの患者さん、職場の先輩・同僚の愚痴大会になることも多いです。
他人と近いからこそ「苦手」と思っても逃げることもできないのです。
リハビリ中はうまくいかないと愚痴を聞く立場にもなり、うまくいないことをこちらのせいにされることもあるでしょう。
ストレスは溜まる一方です。
作業療法士に求められる能力としてコミュニケーション能力というのはあるかもしれません。
給料が安い
作業療法士は前述の通り大変なお仕事でかつ国家資格を取得した人でないといけないにも関わらず給料が安いということで有名です。
医療職といえば他の職種よりも安定して高い賃金で働いているイメージですね。
特に看護師さんや検査技師さんはそのイメージが強いのではないでしょうか。
実際、厚生労働省の2020年賃金統計調査による看護師さんと検査技師さんの平均給料は約30万ほどです。
しかし、作業療法士の平均給料は約28万と2万円の差があります。
平均年収で比較すると50万円ぐらいの差がでるほどです。
患者さんがこれからの日常生活において必要な訓練を計画から回復まで重要な役割を任されているにも関わらず見合っていないと残念に思う人もいます。
お仕事の大変さと給料を天秤にかけたときがっかりしてしまい、1年ぐらいでやめてしまう人もいます。
主にこの3つの理由から作業療法士はやめとけと言われるようです。
作業療法士はやめとけと言われる職場環境
作業療法士が働ける職場というのは8つ種類があります。
もしやめたいと思ってもこのお仕事が好きなのであれば職場を変えることで改善するかもしれません。
そのために職場ごとのお仕事の内容とどんなことが求められているかをまとめてみました。
急性期病院
急性疾患の患者さんや重症患者さんが手術や治療を行ったあとの入院中のリハビリが主なお仕事です。
患者さんはモニターや点滴をつけている状態が多く、日常的な食事や指先の動きの練習をしつつ、リスク管理をしなければいけません。
入院中の患者さんですのでリハビリは主治医の指示のもと行います。
困ったときや患者さんの意向を聞いて、医師へ指示を仰ぐことができます。
作業療法士の人数が多く、他の職種も多く働いているためアドバイスを受けたり、連携がしやすい環境です。
様々な疾患の患者さんに対応できるように勉強会や研修の参加は多めです。
回復期病院
急性期を終えて、容態が安定した入院中の患者さんのリハビリが主な仕事です。
退院をみすえて日常生活に必要な動作の向上と改善を目指したリハビリを提供をします。
職場や社会復帰のための福祉用具の使用の提案などを行います。
生活上必要であればバリアフリーな住宅への案内なども行います。
入院中なので決められた時間で最低限な生活動作の回復をしますので、患者さんも熱心にリハビリに取り組んでくれる傾向にあります。
デメリットとしては回復期支援を行う病院の作業療法士の給与は他の施設よりやや低い傾向にあります。
作業療法士はやめとけと言われるのはこの急性期と回復期の事務仕事の多さと膨大な勉強量かもしれません。
療養型病院
容態は安定しているが長期の療養が必要な患者さんの身体機能の維持や向上を目的としたリハビリが主なお仕事です。
在宅治療や長期入院の患者さんが日常生活における身体機能の低下をしないようにサポートします。
治療によって筋力の落ちている患者さんのために生活の質をレベルに合わせながら計画を立てます。
リハビリの内容が単調になりやすく、一人の患者さんと長期的に付き合うことになります。
小規模な施設が多くスタッフの人数も少ないので勉強会の機会は少なめで、残業も少ないことが多いです。
精神科病院
うつ病や統合失調症などの精神疾患を抱える患者さんが社会復帰できるよう精神ケアが主なお仕事です。
作業療法士は身体的な機能の回復だけではなく、心のリハビリをすることもあります。
他の診療と違い、目に見えづらい分、患者さんから読み取らなければいけない情報量が多いかもしれません。
退院後も笑顔でいてもらうためにレクリエーションやイベントを催し、楽しんで参加してもらうプログラムを計画します。
心を閉ざしている患者さんはコミュニケーションを取ることすら難しく、なかなかケアも進まないかもしれません。
その葛藤と焦りのストレスを感じることもありますが、経験年数の多い職員が多いので支えになってくれるでしょう。
やめとけと言われる仕事ですが対象とする相手が退院してくれることを考えると、やりがいととらえることもできるかもしれませんね。
介護老人保健施設
加齢に伴う身体機能や認知機能の低下で日常生活における機能への予防や維持をすることが主なお仕事です。
基本的に65歳以上の患者さんに対して行うリハビリの為、劇的な回復が見込まれるわけではありません。
体や頭を使わないことで機能はどんどん低下し、最悪な場合は寝たきりになる恐れがあります。
寝たきりにならないように体を動かすプログラムや頭を使う作業を取り入れながら会話を楽しんでもらうよう心がけます。
大きな回復が見られない分、作業療法士は挫折を味わいやすいかもしれません。
歩行訓練など基本的な動作を担当することが多くなってしまいます。
担当時間も限られており、残業になることはほぼ少ないです。
訪問リハビリ
要介護1~5に認定された利用者さんを対象に自宅でのリハビリを行うのが主なお仕事です。
高齢者が増えている中、自宅でのリハビリは需要が高く、人気がある職場の一つです。
勤める施設にもよりますが数重視なところもあれば、質重視なところもあります。
病院勤務の時間制と違い、訪問1件につきと計算するため給与も高めなことが多いです。
土日祝はお休みで平日の利用がほとんどです。
ただし、平日の休暇は取りづらい傾向にあります。
自宅でのリハビリは病院と違い、環境が整っているわけではないので提案するのも経験が豊富な人のほうが向いています。
だいたい訪問も1人が多く、手伝ってくれる人もいないので自分で考えて行動しなければいけません。
件数をこなすためにフットワークの軽さは必要ですが、経験値を求められる難しい職場といえます。
デイサービス
デイサービスは通所型の施設で食事、入浴などの介護サービスを行う事業所です。
近年、デイサービスでも機能訓練に特化した施設も増えており、指導員として雇われるケースがあります。
シフト制になっており、休み等も取れやすいです。
ただ、リハビリ専門のスタッフは少ないため相談はしにくいと思われます。
単調な機能訓練が主な仕事となるのでキャリアアップは難しいです。
いずれもリハビリが必要な現場ですが、どんな患者さんのために頑張りたいかが変わってきます。
自分に合う職場を見つけることが今後、作業療法士を続けるために大切です。
やめとけと言われてもせっかく取得した資格とキャリアを失わないために様々な職場あることを念頭に置いていただきたいです。
作業療法士はやめとけと言った人々の進路は?
作業療法士をやめとけというのは離職した人や、キャリアを捨てないために今も職場を変えながら働いている人の声です。
作業療法士が今働いている職場をやめたいと思ったときの進路は別の職場への転職か、まったく違う職種への転職か、研究職などの学業に励むかの3択です。
前章にも触れたように作業療法士が働ける職場は種類も多く、対象とする相手も違います。
なので進路によって求められる能力や訓練内容が異なってきます。
はじめはキャリアアップや安定面から病院勤務で勤めるものの、職場環境が合わない、給与が低い、人間関係の問題で転職を考えるのではないかと思います。
やめとけと言われても作業療法士としての仕事は続けて、経験値を増やしたいということであれば選び方は4つほどあるでしょう。
残業や時間外が多いことが悩みであれば老年期の患者さんがいる現場がおすすめでしょう。
老年期の患者さんが多い現場としては、介護老人保健施設やデイサービスです。
シフト制や勉強会などの機会が少ないために残業は他と比べると少ないです。
人間関係で悩みであれば、療養型のスタッフが少なめな現場か、逆に他業種との連携が図れる総合病院もいいでしょう。
キャリアアップを狙ってバリバリ働きたいということであれば、急性期や回復期の患者さんが多い病棟がある病院がいいでしょう。
もう経験値はあり、プライベートや家庭との両立をしたいという方であれば訪問リハビリやデイサービス、経路を変えて精神科病院でもいいかもしれません。
次に他業種に転職する場合ですが、多くの方は作業療法士という経歴を活かせる職に就きます。
例えばジムのトレーナーやスポーツのインストラクターなど体の動かし方について専門的知識が必要な職業です。
他にも介護の現場にいた場合は、介護用品やケースワーカーなどの支援員さんでもいいかもしれません。
逆に今まで医療や介護に携わってきたので、全く違う職業を選ぶ人もいます。
作業療法士というコミュニケーション能力が高く、忍耐強い仕事は履歴書にもプラスになります。
最後に研究職ということですが、現場にいたからこそ学びなおしたり、学会での発表する側へまわりたいと思った方もいます。
机上ではわからない問題点を解決することは現場にいる人では難しくても、協会などの研究する側からのアプローチという方法もあります。
また、勉強すると言っても他の医療従事者に感化されて別の資格を目指す人も多くありません。
作業療法士はやめとけと言っても別に選ぶ選択肢がなくなるわけではなく、進路を広げることができる場合もあるのです。
まとめ
- 作業療法士はやめとけと言われる原因1は残業だらけ
- 作業療法士はやめとけと言われる原因2は給料が安い
- 作業療法士はやめとけと言われる原因3は偏った人間関係
作業療法士のお仕事は医療とともにあり、なくてはならないお仕事の一種だと思います。
ただ、その裏では寝る間も惜しんでたくさんの勉強をして、質の良いリハビリに励んでくれています。
他の医療従事者よりも割に合わない給料で、献身的に補助してくれます。
もし自分が入院したり、家族がお世話になっているのであれば素直に耳を傾け、まじめにリハビリに取り組むことでやめたいと思う人が減るかもしれません。
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